瓦屋根の耐震性と安全性について


阪神大震災、木造住宅倒壊の原因は果たして瓦屋根だったからでしょうか

阪神大震災を伝える各種報道を見た方々は、倒壊家屋の多くが木造瓦屋根だったという印象を持たれたことと思います。ところが、現地を詳しく調査した大阪市立大学生活科学部の宮野道雄教授は、当時次のようにコメントしていました。
  「木造住宅の被害について現地を調査してわかったことは、まず基本的には戦前もしくは戦後間もなく建てられた古い建物の被害が多かったことである。原因としては、筋違のない竹小舞下地土塗り壁のため、構造そのものが耐震性に非常に乏しかったこと、および土葺きによる屋根重量の大きさがあげられる。さらに、白アリや腐朽菌による柱・土台などの構造材の蟻害・腐食が予想外に多く、これらの家屋では建物用途や屋根葺材の種類とは無関係に極めて高い被害率を示した。一方、比較的新Lい木造住宅の被害も少なからず見られたが、その多くは補強金物の使用が不充分であるなど施工不良が理由と考えられた。」
  家屋倒壊の原因は瓦屋根にある、と一概には言えないことがだんだんわかってきたのです。しかし、このようを被害を二度と起こさないためにも、木造住宅に不可欠な産業として、私たちは瓦屋根の施工方法についここであらためて確認させていただきたいのです。


「耐震・耐風施工」瓦一枚一枚を釘打ちし、安全性を高めます

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瓦には一枚ごとに「ひっかけ」がついていて、瓦桟にひっかけることでズレにくく、災害にも強い構造になっています。さらに、施工時の釘打ちについても、安全のためにこれまでさまざまな基準がつくられてきました。(図1・図2)しかし、今回のような予想以上の災害に対応するために、私たちは、すべての瓦を釘打ちするなど「耐震・耐風施工」(図3)の基準を新たにつくり、普及につとめていきたいと考えています。

屋根の重量を約半分に減らす「ひっかけ葺き」をおすすめします

また今回の地震には屋根の重量が大きく関わっています。瓦の葺き方には大きく2種類あり、昔は土を敷いた上に瓦を葺く「土葺工法」でしたが、関東大震災後から、瓦の裏に「ひっかけ」をつけて瓦桟にひっかける「ひっかけ葺き」が普及しはじめました。これだと屋根の重量が、従来の「土葺工法」に比べて約1/2〜1/3と軽くなるのです(図4)。関西地方では、関東地方に比べて古い木造家屋が多かったり(表1)、土葺工法による重量負担が大きかったりしたことがこ今回の大きな被害につながったと言われています。軽量かつ安全な「ひっかけ葺き」を私たちはこれからもすすめていきたいと考えています。


適正な施工の下では充分な耐震性を持つことが実証されています

もうひとつ、心強い事実があります。建築基準法改正後の耐震実験(全日本瓦工事業連盟、全国陶器瓦工業組合連合会共催、建設省後援、昭和56年)では、瓦屋根は震度7の激震にも耐えることが実証されたのです。適正な基礎・骨組み・瓦屋根の施工が行われた建物では、瓦が落下することさえありませんでした。



瓦、それは自然災害に強く、快適性に優れた屋根材です

粘土を高温で焼き絞め、耐久性と耐火性に優れた屋根材、瓦。焼けつく夏の太陽も、冬の冷気もシャットアウトする断熱性。健康に重大な害をもたらすアスベストとは無縁の、自然素材。これら数多くの優れたメリットがあるからこそ、瓦はこの地震国・日本で1400年以上も使われ続けてきたのです。日本の家にはなくてはならない大切な屋根材だから、私たちはこれからもさまざまな安全基準の普及を通じて、美しい瓦屋根の町並みを守っていきたい。瓦が少し誤解されている今だから、あえてこのようなメッセージを送らせていただきました。


奈良県瓦工事業協同組合