◆谷(たに)
屋根の二つの傾斜面の流れの合う部分を谷という。谷の部分の納まりには、谷板(たにいた)の上に桟瓦を載せて葺く場合と、谷瓦を載せて葺く場合とがある。


◆谷板(たにいた)
谷の部分に瓦の下に置き樋として用いる板で、ステンレスや銅板が用いられる。谷の部分からの吹き込むを防ぐために、端を立ち上げさらにその先を伸ばしておくようにする。谷板の幅は300mm程度。


◆谷瓦(たにがわら)
谷部分に使う瓦で本瓦葺き用は本谷瓦、桟瓦(和瓦)用のものは並谷瓦と呼んでいる。並谷瓦は樋のような役目をする谷平瓦、その軒先部分に使われる谷先瓦、これらの上や谷板の上に載せられる谷筋違(たにすじかい)とその軒先の部分の谷口とがある。


◆谷筋違(たにすじかい)
谷瓦の一つで平谷瓦や谷板など樋の部分に載せられ、桟瓦の谷部分の端部となる瓦。


◆玉縁(たまぶち)
本葺型の瓦は平瓦と丸瓦との組合せで葺かれる。この丸瓦は胴と玉縁(たまぶち)とから構成される。
玉縁は玉口とも呼ばれるが、重ねるために胴にくらべ高さと幅を狭くしている。玉縁側が水上に置かれ、この部分が胴の部分を重ねて葺く。


◆だるま窯(だるまがま)
古くから使われていた窯で、とくにいぶし瓦が生まれてくると、還元に便利なだるま窯が発達した。両側に焚き口があり、窯中央上部に煙突が付けられる。窯は粘土で作られている。
だるま窯の場合、火力は下部から上部にのぼるため、下部で火力が強く窯の上部は火力が弱い。1回で1000枚程度焼くことができるが、上質なものは300枚程度である。


◆垂れ付伏間瓦(たれつきふすまがわら)
棟の最上部に載せられる瓦を棟瓦と呼ぶが、棟瓦のうち比較的平たいものを伏間瓦、丸形や山形になった背の高いものを冠瓦と呼ぶ場合が多い。棟瓦の重なる部分を桟と呼んでいるが、桟と水垂れがついたものを垂れ付伏間瓦と呼ぶ。これは関西地方で多く使われる京伏間とも呼ばれる。


◆土葺(つちぶき)
瓦の葺き方は大きくは土葺(つちふき)と引掛葺き(ひっかけぶき)とに分けられる。土葺は瓦の下に土を置いて葺くもので、べた葺と筋葺(すじぶき)とがある。引掛葺きでは瓦を引っかけるため瓦桟が屋根下地の上に打たれるが、土葺では土のずれを防ぐため450〜900mm間隔で土留桟が打たれる。


◆土留桟(つちどめざん)
瓦の下に土を置く土葺で、土のずれを防ぐために450〜900mm間隔で打たれる桟で、杉の貫材が使われる。


◆照り起り屋根(てりむくりやね)
照り屋根と起り屋根を組み合わせた屋根で、厨子(ずし)や燈篭(とうろう)などで使われる。


◆照り屋根(てりやね)
弓状に流れの中央部分がたるんでいる屋根で、神社、寺、城郭などで使われる。反り屋根(そりやね)とも呼ぶ。逆に中央部が膨らんだものは起り屋根(むくりやね)と呼ばれる。


◆天窓瓦(てんまどがわら)
屋根に天窓を開けるために用いる瓦。2枚で一つの天窓を構成するものから、20枚相当の部分を構成する、14枚からなる大きな天窓瓦まである。


◆倒焔窯(とうえんがま)
塩焼瓦を製造する窯で、重油バーナーで横より炎をかけて熱し、炎は上部から下部に下がって焼成される。
最近では金属製の倒焔窯が使われている。燃料はブタンガスで重油より火力が強く良好な瓦が製造できるようになった。


◆土葺(どぶき)
瓦の葺き方は大きくは土葺(つちふき)と引掛葺き(ひっかけぶき)とに分けられる。土葺はどぶきとも呼ばれる。


◆巴瓦(ともえがわら)
丸瓦の先に巴がついた瓦で、使用される部分で名称が異なる。また一般には軒巴(のきどもえ)のことを巴瓦とも呼ぶ。
巴瓦には、本瓦葺きの丸瓦の軒先部分や桟瓦の紐丸瓦の軒先で使われる軒巴(のきどもえ)、棟の先端で袖瓦の接合部で使われる棟巴(むねともえ)、破風に掛瓦を使う場合の棟の接合部の拝巴(おがみどもえ)、紐丸瓦を屋根の途中で止める場合の半月巴(はんげつどもえ)などがある。


◆鳥伏間(とりふすま)
棟の最上部に載せられる瓦を棟瓦と呼ぶが、棟瓦のうち比較的平たいものを伏間瓦(ふすまがわら)、丸形や山形になった背の高いものを冠瓦と呼ぶ場合が多い。鳥伏間は本瓦葺きで鬼瓦の上に載せられ、伏間に接続して葺かれる。角のように出た部分は鳥休(とりやすみ)と呼ばれる。


◆鳥休(とりやすみ)
鳥伏間は本瓦葺きで鬼瓦の上に載せられ、伏間に接続して葺かれるが、角のように出た部分は鳥休と呼ばれる。


◆土練(どれん)
土練は原土(げんど)に適当な水を加えて練ることで、機械化される以前は足で練っていた。
よくねかした粘土を、水打ちしながら何回も足で踏みならした。粘土は人間の足の力で繰り返し縦横に踏み返されるので、餅や蕎麦粉をこねるように粘りと粒子の均一性が得られた。
現在ではほとんど真空土練機で行われている。


◆土練機(どれんき)
大正時代に入ってから1920年代に機械式の土練機が日本でも広く使われるようになった。最初にわが国で土練機が使われたのは、1872年で、フランス人アルフレッド・ジェラールが横浜元町にわが国ではじめての土練機や製瓦機を使った近代設備を持った製瓦工場を作ったことから始まる。わが国の一般の瓦業者が近代設備を導入するのは、ジェラールに遅れること50年経ってからである。
現在では真空土練機が使われている。足で練ったと同様な効果を出すよう、軸の羽の回転と合わせ縦横の回転も併用して、さらにラミネーション(一方回転にともなううねり波層)の解消のため、二重ドラムの間に粘土を通して送り出すような機構になっている。


◆トンネル窯(とんねるがま)
大規模な瓦製造工場で用いられている窯で、他の窯に比べ燃料効率が高く燃料費が最も安い。150〜200枚の瓦が台車に2段から3段積みされ、トンネル窯の入口からレールの上をゆっくりした速度で入っていく。トンネルの中で40〜60分で焼成され出てくる。窯の中央部の左右にオイルバーナーが設置され噴射され、自動制御装置により窯内部の温度を1050〜1200℃に調整される。
トンネル窯では1日に1〜2万枚の瓦を焼くことができる。だるま窯の30〜40倍の能力がある。最近では釉薬瓦だけでなくいびし瓦もトンネル窯で焼成できるようになってきた。


◆トンビ
寄棟や入母屋の隅の軒先に使われる瓦を隅瓦(すみがわら)と呼んでいるが、いくつかの部分に分けたものを切隅(きりすみ)、一体になった瓦を廻隅あるいはトンビと呼んでいる。


次へ進みます。<な〜の>
瓦の辞典−目次−に戻ります。
ホームページに戻ります。